日本の伝統技法である金継ぎとは?大切な器を蘇らせる技術の魅力!
金継ぎは、ハンドメイドやDIYブームの影響もあってか、近年よく聞くようになりました。ものがあふれる現代では、欠けたり割れたりした器は簡単に買い替えられます。しかし、安価で手に入る時代だからこそ、金継ぎに魅了された人が多いのでしょう。今回は、金継ぎの歴史や魅力、初心者が金継ぎに挑戦する方法についても紹介します。
金継ぎとは
金継ぎとは、割れたり欠けたりした器を、天然の漆(うるし)を使って修復する日本古来の伝統技法です。漆はウルシの木から採れる樹液を加工して作られます。湿気や塩分にも強く、耐水性や防腐性、防虫効果などさまざまな効果を持っているのが特徴です。
この漆を加工すると、人体に無害で自然にも優しい接着剤が完成。天然由来の接着剤として、重宝されています。
金継ぎは割れ目や欠けた跡を、歴史の一部としてとらえます。そのため、目立たないように接着する修復方法とは、コンセプトが大きく異なるでしょう。金継ぎの歴史は諸説あるものの、安土桃山時代から江戸時代ごろといわれています。
この時代はお茶文化が発展しており、高価な茶器を保有することに憧れを抱く人がたくさんいました。大切な器が欠けたり、割れたりした際にも修理して長く使うため、金継ぎの技術が生まれたのでしょう。ものを大切にする日本文化の象徴ともいえます。
割れたり欠けたりした器を蘇らせる金継ぎの魅力
金継ぎは日本の未来、海外でも注目される伝統技法です。実際に金継ぎを体験できるワークショップや講座も開かれており、その人気は計り知れません。金継ぎを現代風のいい方に直すと「リメイク」でしょう。古くなったり壊れたりした器に金継ぎを施せば、引き続き使用できます。
修理して使えるので、これまでよりも気軽に、大切な器を使用できるでしょう。出番が増えた器も、きっと喜びます。もったいないから、高価な器だから、といった理由で、器をしまい込む必要がなくなりますよ。
また金継ぎの模様は、おしゃれなデザインとしても楽しませてくれます。修復跡もありのままのデザインとして受け入れる思想は、禅にも通じる部分があるでしょう。
さらに自分で金継ぎを行えば、壊れてしまった器と向き合う時間にできます。金継ぎは細かい作業の繰り返しです。1週間ごとに漆を上塗りするため、1か月以上の時間も要します。
しかし時間をかけて手入れをするほど、器の魅力を深く知れ、愛着も湧くでしょう。思い入れのある器こそ、金継ぎをして修復してみてはいかがでしょうか。
金継ぎは初心者でもできる?
高い技術が必要に見える金継ぎですが、実は初心者でも簡単にできる方法があります。この方法なら、金継ぎに初めて挑戦する人でも壊れた器を修復可能です。金継ぎの方法を簡単に紹介するので、ぜひ挑戦してみてください。
金継ぎで修復できる器とは
そもそも金継ぎなら、どんな器でも修復できるのでしょうか。答えは「NO」です。ガラス製のコップや漆器は、金継ぎ職人でも難易度が高くなります。初心者でも挑戦しやすいのは、陶器です。接着しやすく、金継ぎの跡も模様として楽しめます。
簡単な金継ぎのやり方
まずは破片の断面の面取りを行います。耐水ペーパーやダイヤモンドヤスリを使って、丁寧に削りましょう。筆や竹べらなどを使って、断面に麦漆(むぎうるし)を薄く塗ります。漆が多すぎると、割れ目からはみ出し、仕上がりが汚くなるので注意が必要です。少しはみ出るくらいが適量です。
破片を接着したら、マスキングテープで両面を固定するとズレにくくなります。漆風呂と呼ばれる、温度20~30℃、湿度70~85%程度の箱に入れて保管しましょう。1~2週間ほどおき、完全に固まったら、マスキングテープを剥がします。割れ目からはみ出た漆は、カッターナイフや耐水ペーパーなどで削っておきましょう。
大きな欠けや欠損部分には錆漆(さびうるし)を埋めます。再度、漆風呂に入れて固め、はみ出た漆を耐水ペーパーで削り落としてください。表面の滑らかさが最後の仕上がりを大きく左右するため、少しずつ丁寧に作業しましょう。
次に黒色漆を下地として薄く塗ります。漆風呂で乾燥させたら、いよいよ仕上げです。弁柄漆という金粉の下地を、黒色漆の上に塗りましょう。薄ければ薄いほど、仕上がりはきれいです。15~30分程度時間をおき、金粉を撒きます。余分な金粉は刷毛などで払い落としておきましょう。漆風呂で1週間ほど固めて完成です。
金継ぎを行う際の注意点
金継ぎに使うのは、天然の漆です。漆は直接皮膚に触れると、かぶれる可能性があります。作業時には手袋やアームカバーでしっかりとガードしておきましょう。
まとめ
金継ぎの歴史は、安土桃山時代もしくはそれ以上昔に遡ります。縄文時代にも、漆を使って器を治していたとの情報もあり、漆の性能ははるか昔から気付かれていたようです。金継ぎは初心者でも気軽に挑戦できます。材料や道具はホームセンターでも購入できるため、ぜひ挑戦してみてください。これまで以上に、器に愛着がわくはずです。