日本の伝統工芸品である漆器とは?割れたり欠けたりしても修理できる?
漆器は日本の伝統工芸品として、世界からも非常に高い評価を受けています。しかし、そんな漆器の詳しい情報について知っているという方は少ないのではないでしょうか。そこで、今回は漆器の概要や歴史、修理方法などについてご紹介します。漆器に興味のある方は、ぜひご一読ください。
漆器とは
「漆器」とは、漆を塗料として作った器や道具のことを指します。伝統的な漆器には天然の漆が使用されていますが、一部ではウレタン・カシュー塗装が施されたものについても漆器と呼称されることがあります。
漆とは
漆器の元となる漆とは、アジアに生息するウルシの木から採取した樹液あるいはそれを複製したもののことです。古くから接着剤や塗料などとして人々の生活を支えており、その優れた機能性から漆器をはじめ、さまざまな工芸品・芸術品などに広く用いられています。
漆器(漆)の特徴
ウルシの木の樹液に含まれている成分は、固まることによってさまざまな機能を発揮するという性質があり、耐久性・断熱性・耐腐性・耐水性が非常に高いことから、現在においても漆に代わる塗料は開発されていないといわれています。また漆独自の特徴として、塗り重ねていくごとに強度が増すほか、揮発した漆に塗料を混ぜ合わせることで、美しく発色するといった性質もあります。
漆と漆器の歴史
日本では古来より漆が人の生活に活用されており、複数の遺跡から漆を用いた装飾品などが発見されています。また、これまで漆はほかの大陸から日本に渡来してきたと知られていましたが、1984年に福井若狭町・鳥浜貝塚から出土した漆の木片を2011年に調査したところ、約1万2,000年前のものであることが判明し、これが最古の記録であったため、ウルシの木は日本が発祥の地であるといった説もあるようです。
時代とともに広がる用途
飛鳥時代から寺院や仏像など、芸術的な用途として漆が使われることが増えていきました。時代とともに漆の技法も洗練されていき、鎌倉時代には漆塗り、素地作り、など作業の分業化も進んでいきます。各地での大きな戦や戦乱が落ち着いた江戸時代にもなると、漆の活用法はさらに広がり、生活用品や刀など日用的・実用的な道具にも使用されるようになりました。
世界から注目が集まる漆芸
明治時代に開催された万国博覧会に漆芸品が出展されたことを機に、日本が誇る工芸品として、漆は世界から高い評価を得ることになります。漆芸が大いに盛り上がりを見せる中、さまざまな漆芸品や漆職人が登場し、現在まで続く漆の基盤を築き上げてきました。
現在の漆
長い歴史の中で時代とともに脈々と受け継がれてきた漆の文化は、現在においても日本の生活を支えるかけがえのないものとなっています。一方で漆芸を受け継ぐ後継者不足の問題や、日本で使用されている漆の大半以上が外国産のものであるなど、さまざまな問題に直面しているのも事実です。
また、伝統建築や文化財に用いられている漆の多くは国産のものであるため、今後の補修・修繕を考慮すると、国産の漆の存在が今後の漆文化の存続において非常に重要となってくるでしょう。
漆器の修理も可能
上記でもご紹介したように漆器は耐久性が非常に高く、機能性に優れた器・道具ではありますが、使い続けていくことでかけたり割れたりしてしまう可能性もあります。しかし、適切な方法で修理を行うことで、長く使い続けていくことが可能です。ここでは、漆器の主な修理方法についてご紹介します。
塗り直し
漆塗料の耐薬品性や耐摩耗性はほかの塗料と比べても非常に高いとされていますが、それでも長く使い続けていけば徐々にすり減ってしまいます。このような場合、表面の塗膜だけを一度研ぎ落してから漆を塗り直すことで、新品同様に仕上げることが可能です。
金継ぎ
欠けてしまい、ひび割れてしまった部分を漆で修復し、キズの部分に金粉を撒いて修復する方法を「金継ぎ」と呼びます。金継を行うことで、漆器を綺麗に修復できるほか、アクセントが加わることで修理前とは違った印象を楽しむことが可能です。
漆繕い
漆器は天然木であるため、ガラスや陶磁器のように落としてしまったり、ぶつけてしまったりした場合にも粉々に砕けてしまうということはありません。しかし、硬いものにぶつけた際や当たり所が悪かった際には、器自体にかけやひび割れ、塗膜の剝離などの問題が生じてしまう可能性があります。
このような問題が起こった場合には、漆で繕うことで補修することが可能です。繕った箇所については、赤や黒の漆で塗った後に金粉や錫粉を加えることで「金継ぎ」のような見た目に仕上げることもできます。
まとめ
ここでは、日本の伝統工芸品である漆器の特徴や歴史、破損した際の修理方法についてご紹介しました。漆器は見た目の美しさもさることながら、耐久性・耐水性・断熱性・耐腐性にも優れた非常に機能的な器です。しかし、長く使い続けることで割れたりかけたりしてしまう可能性もあるため、修復を行いたいという場合には、プロの業者に修理を依頼するのがおすすめです。